クロマグロが絶滅危惧種だった理由は?養殖の場所や一匹の値段も!
みなさんはマグロのお寿司やお刺身は好きですか?
マグロの中でもクロマグロは「本マグロ」「黒いダイヤ」とも言われ、高級魚として重宝されています。
実はそのクロマグロが絶滅危惧種に指定されていた事があるのですが、知っていましたか?
そんなクロマグロがどうして絶滅危惧種になってしまったのか、その解決策にはどのような取り組みがあったのか、今までの経緯を追ってみました。
数が少なくなった天然物のクロマグロの代わりになれるような養殖クロマグロの事や、高級魚って言うからにはその値段も知りたいですよね?
そんなクロマグロの知らなかった!について詳しくご紹介していきましょう!
クロマグロって絶滅危惧種なの?理由は何?
2014年、国際自然保護連合(IUCN)が絶滅の恐れがある野生生物のレッドリストを公表したのですが、太平洋クロマグロを「軽度の懸念」から「絶滅危惧」に引き上げられていたのです。
IUCNは特にアジア地域で寿司・刺身として需要があるため、漁業者が競って獲得しようとしていると分析して、漁獲量のほとんどは産卵前の若い魚であることもクロマグロの数が減っている原因だと伝えていました。
お寿司大好きな日本人のマグロ大量消費もその原因になっていたのですね…。
それは大変!ということで、クロマグロの数を少しでも元に戻そうと「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」小委員会は産卵前の若い魚(未成魚:30kg未満)の漁獲枠を以前の基準値の半分にまで減らすことを決めました。
太平洋だけでなく、大西洋・地中海域クロマグロも漁獲枠を最大時の3分の1位まで縮小されて、未成魚の原則禁漁も徹底したのです。
じゃあ、養殖したらいいのでは?と思いますよね。
でも養殖する場合は、水産庁は2012年から天然の幼魚からの養殖の拡大を禁止したので、養殖するならば完全養殖(養殖された親魚から生まれた幼魚を育てる事)を進めるしか道はなくなってしまったのです。
そこで、クロマグロを完全養殖する技術が注目されるようになったのです!
2002年から完全養殖を達成していた、完全養殖のパイオニアである近畿大学が「近大マグロ」を開発し、アンテナショップを東京・大阪で開いた際には大変人気を博したようです。
当時近畿大学には、豊田通商・東洋冷蔵・長崎県まぐろ養殖協議会などのネットワークがあったようです。
完全養殖のマグロを普及しようと、いくつかの大手企業に働きかけが進んでいったようです。
例えば、2017年には水産大手の極洋が日本配合飼料と共に完全養殖クロマグロの出荷を開始しました。
漁獲量を制限し、完全養殖のマグロの普及を続けた結果、2021年9月にIUCNが発表したレッドリストには、太平洋クロマグロを「準絶滅危惧」、大西洋クロマグロを「低懸念」と危惧のランクを下げることができたのです!
太平洋クロマグロはまだ「準」絶滅危惧ではありますが、危機を脱している方向が見えた事は希望を持てますね。
クロマグロの養殖の場所はどこ?暖かいところ?
2021年3月に水産庁が発表した2020年のクロマグロ養殖実績を見てみると、全国に186ヶ所もの養殖場があって、養殖場の数の多い順から見てみると、1位長崎県:82ヶ所、2位鹿児島県:36ヶ所、3位愛媛県:18ヶ所、4位大分県:11ヶ所、5位高知県:9ヶ所でした。
養殖場が多い場所は、九州と四国なのですね。
養殖生け簀(全国で1,527)の数の多い順だと1位:長崎県(772)、2位:鹿児島県(220)、3位:愛媛県(102)、4位:和歌山県・大分県(それぞれ93)でした。
和歌山県が上位にランクインしたのは近畿大学の研究施設が和歌山にある事も関係しているのではないでしょうか。
やはりクロマグロの養殖には暖かい気候がふさわしいようです。
ここには養殖実績だけでなく、養殖の内容も説明が書かれていました。
天然種苗と人口種苗があるようで、天然の場合は採捕したクロマグロを種苗として利用されていて、人口種苗は受精卵を陸上で孵化させて育成するのだそうです。
天然種苗は養殖の生け簀に放される時はすでに体長30cm以上あるのですが、人口種苗は体長5cm程度で小さい為に、天然種苗と同じ大きさになる前に人口種苗が育たずに死んでしまう事が数多くあるようです。
養殖の場所が全国に広がってたくさんのクロマグロを育てることができた一方で、このような生産者の苦労があるのです。
クロマグロ一匹の値段は?大きいほど高い!
マグロの大きさは個体差があるので、一本づつ競りにかけて値段を決めていきます。
お正月の初競りはご祝儀価格が毎年ニュースになっていて、派手なパフォーマンスのような様子がTVでも放送されますよね。
その日は朝早くから競り人や仲卸達はしっかり品定めをした上で初競りに参加するのだそうです。
2020年の初競りでは東京の豊洲市場で青森・大間のクロマグロに1億9320万円の値段がついていました!(1本276kgなので、70万円/kg)
実際は普段の高値のマグロは500万円位なのだそうです。
先ほどのご祝儀価格で感覚がマヒしそうですが、改めて値段を見たら高い物ですね。
クロマグロはマグロの中でも一番高値がついて、特に天然物は養殖よりも高価です。
天然物が7,000〜30,000円/kgで、一般的に大きさが天然物より小さ目の養殖なら2,000〜3,000円/kgの値段が付くそうです。
天然で個体が大きいマグロであるほど高値がつきやすいということみたいです。
刺身一切れが平均して17gで、一人前が大体100g位なので、天然物だと単純計算したら3,000円、養殖なら300円ですね。
もちろんこれは卸値だからお店ではもう少しかかりますね…。
養殖なら手に届きやすくて美味しく食べられそうです!
まとめ
クロマグロが絶滅危惧種と言われた時は、「もうマグロが食べられなくなるの?」と思って焦ってしまいました。
私たちの知らないところで、多くの漁業関係者や研究者・企業の努力のおかげで、みんなの大好きなクロマグロの生体環境が守られ、美味しくて手に入りやすいマグロも開発されていたのです。
ご飯を食べた後「ごちそうさまでした」と言いますが、それは作ってくれた人だけでなく、それまでの過程全てに感謝する言葉でもあるんですよね。
今度奮発してクロマグロを食べる機会があったらそんなことに思いを馳せながら「ごちそうさま」を言いたいと思いました。